連載 A.M.C.心臓手術と麻酔:第6回
狭心症に対する人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術
吉田 和則
1
,
内藤 嘉之
2
,
井出 雅洋
3
1西宮渡辺病院 外科
2明石医療センター 麻酔科
3神戸麻酔アソシエイツ
pp.168-178
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100034
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症例
70歳の女性。身長152cm,体重45kg,BSA1.37m2。関節リウマチによる右人工股関節置換術の既往があり,高血圧,糖尿病,慢性腎不全の合併症がある。リハビリ中に前胸部痛を自覚し,心臓カテーテル検査にて冠動脈狭窄3枝病変と左心室壁運動異常を指摘された。陳旧性心筋梗塞および狭心症の診断にて,手術目的で当院紹介入院となった。人工心肺を用いない心拍動下冠動脈バイパス術〔右冠動脈(RCA),左前下行枝(LAD),回旋枝(CX)領域への4枝バイパス〕が予定された。
麻酔科から
90年代後半から急速に増加した人工心肺(CPB)を用いない心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB*1)(コラム1)は,心臓麻酔に携わる麻酔科医の仕事を根底から覆したといっても過言ではない。心臓手術の麻酔では,ひとたびCPBが開始されれば張り詰めた緊張から開放され,休憩や食事交代の時間が得られるのが普通である。ところがCPBを用いないと,事情が一変するからである。一息つけるのはたかだか,麻酔導入が無事終了した後のグラフト採取時だけ。心臓の手術操作がいったん始まると,今度はさらに緊迫した時間を強いられる。
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