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現在,冠動脈の多枝病変に対する侵襲的治療には,経皮的冠動脈インターベンションpercutaneous coronary intervention (PCI)と冠動脈バイパス術coronary artery bypass grafting(CABG)がある。ところが,近年のステントデバイスの進歩により冠動脈病変の初期治療の大半は,PCIで行われるようになった。特に,薬剤溶出性ステントdrug-eluting stent(DES)の登場により,CABGを必要とする患者は減少しつつある。DESにより再狭窄率は従来のステントに比較し格段に改善したが,依然,再狭窄の問題や血栓性合併症の問題などが存在している。
一方CABGは,術式と原理は大きく変遷することはないが,多枝病変,左主幹部(LMT)病変,心機能不良患者,糖尿病患者,透析患者などで,その有効性は以前から証明されてきた。本稿では,CABGの適応,方法,グラフト戦略および合併症や術後管理について解説する。
Summary
●CABGは,心筋虚血による狭心症症状の緩和,冠動脈閉塞による心筋梗塞の予防,虚血による低心機能の改善を目的に行われる。また,将来生じ得る狭窄に対しても予防効果をもつ。
●CAGBは侵襲度が高いため,冠動脈病変だけではなく,併存疾患や緊急度,全身状態などを考慮して決定する。
●CABGは,ITAなどをグラフトとして用いる。現在日本では人工心肺を用いないoff-pump CABGが主流である。
●一般的な術後合併症は,心不全,周術期心筋梗塞,縦隔出血,脳梗塞,肺炎および呼吸不全,縦隔炎,腎不全,不整脈などである。現在では,術後に至適薬物療法を継続することで予後が改善することが示されている。
●術後管理にあたる医師や看護師は,術中に使用したグラフト血管や吻合部位を把握し,血行動態の変動や心電図の変化に敏感でなければならない。
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