徹底分析シリーズ 脊髄くも膜下麻酔の謎に迫る
日本における脊髄くも膜下麻酔の安全性と死亡率
北山 眞任
1
Masatou KITAYAMA
1
1弘前大学医学部 麻酔科学教室
pp.142-145
発行日 2008年2月1日
Published Date 2008/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100029
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わが国における脊椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)は,第二次大戦後に急速にその症例数が増加した。高比重液での麻酔域の調節が可能になり,また手技が簡単で大掛かりな装置や道具を必要としない利点だけが先行し,外科,産婦人科,整形外科領域の手術に利用された。一方で,呼吸管理や循環管理などの安全性の確保に対する認識が希薄であった。その結果,脊髄くも膜下麻酔による死亡事故が増加した。このことは,著者が所属する弘前大学医学部麻酔科学教室の松木明知名誉教授の著書である『日本における脊椎麻酔死』1)に詳細が記載されている。“合併症は安易な普及で容易に起こる”好例といえよう。
1980年代以降,多くの麻酔科医の安全性向上への啓蒙活動により,1990年代には,脊髄くも膜下麻酔事故の減少という結果に結びついた2)。2003年に公表された「区域麻酔に関する本邦での危機的偶発症発生の現況」3)では初めて大規模な脊髄くも膜下麻酔の危機的偶発症発症率と死亡率の報告がなされている。本稿ではこのデータをもとに,脊髄くも膜下麻酔の安全性の現状と,脊髄くも膜下麻酔事故の背景にある根本的な問題を再検討しながら今後の課題を提示する。
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