症例ライブラリー —こんなことがないように—クスリのリスク
脊髄くも膜下麻酔の麻酔域が広がらない
坂野 彩
1
Banno, Aya
1
1聖路加国際病院 麻酔科
キーワード:
テストドーズ
,
CSEA
,
帝王切開
,
一過性神経症状
Keyword:
テストドーズ
,
CSEA
,
帝王切開
,
一過性神経症状
pp.242-245
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134088360320030242
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■症例
37歳の女性。身長160cm,体重62kg(非妊娠時50kg)。2経妊0経産。子宮筋腫や不妊治療のため複数回の腹部手術歴があり,妊娠38週0日で帝王切開術が予定された。術前検査で子宮周囲に強度な癒着が予想されたため,下腹部正中切開の方針となった。麻酔は2椎間での脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CSEA)を行い,術後鎮痛として硬膜外麻酔を使用する計画とした。上記手術歴以外に特記すべき既往や合併症はなく,妊娠経過に異常はなかった。
右側臥位とし,1%リドカインによる皮下浸潤麻酔を行ってからT11/12より硬膜外カテーテルを挿入した。カテーテルから血液や髄液が引けないことを確認後,あらかじめNRFit®シリンジに準備していた1%リドカイン3mLをテストドーズとして硬膜外腔に投与し,異常がないことを確認した。続いてL3/4よりペンシルポイント針を用いてくも膜を穿刺し,髄液の逆流がしっかりあることを確認してから0.5%高比重ブピバカイン2.2mLとフェンタニル25μgを投与した。
仰臥位に戻すと,患者は下肢の“ほんのり温かい感じ”を訴えた。ところが脊髄くも膜下麻酔を実施してから5分経過した時点では,左右の大腿部にしか冷感の消失が得られなかった。さらに5分後も麻酔域が広がることはなかった。
さて,あなたならどうする?

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