第38回日本生理学会シンポジウム総括報告
(8)感覚受容機構の電気生理
本川 弘一
1
1東北大学医学部生理学教室
pp.194-198
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906198
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神経経維の生理学は可なり明らかになつているが,それに比して受容器の機構の解明は立遅れている。現在,最もよく知られているのは,mechanoreceptorsの機構である。Katzが筋の受容器なる筋紡錘ではじめて明らかにしたように,この受容器に刺激(伸長)が加わると,受容器電位(receptor potential)という比較的ゆるやかに経過する電位が発生して,それがある程度に達すると知覚神経に伝導性のインパルスを生ずるのである。受容器電位が(Granitのいわゆるgenerator potentialとしての役目を果すものと考えられる。圧覚の受容器と考えられているPacini小体でも同様の関係になつていることは佐藤,Grayの研究で明らかにされた。Pacini小体の構造は複雑であるが,原理的には簡単であつて,知覚神経の無髄の部分が機械的に刺激されて受容器電位を発生し,それに基づく電流によつて有髄部のランビエー絞輪が発火させられるものである(第1図参照)。この小体の層状構造物は組織学的には甚だ特異なものであるが,興奮のメカニズムと直接の関係をもたないものらしく,層状物を除去しても尚機械的刺激に応じてインパルスを発生するのである(Loewenstein)。
ザリガニのmechanoreceptorではこの関係が一層はつきりしている。
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