第38回日本生理学会シンポジウム総括報告
(7)神経系における抑制と促進の機構
吉井 直三郎
1
1大阪大学医学部第二生理学教室
pp.190-193
発行日 1961年8月15日
Published Date 1961/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425906197
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表題のシンポジウム第3部で報告された論文は「脳波」に関するものであります。現在の段階では脳波はまだニウロン準位で理解するに到つておりませんから,「神経系における抑制と促進の機構」の解明を期待された方にはこの第3部はお役に立たなかつたかと思います。しかしながら神経系の「抑制と促進の機構」を内蔵している脳波の研究が,現在どのように進められているか,将来どの方向に進められるべきかを知ろうとする人には,多くの収穫があつたと思います。
(1)ニウロンの集団反応としての脳波は,一方の極は行動と,他方の極はニウロン活動とつながり,両者をむすび付ける仲介者として,またかつては末梢反応を通じて想像していた中枢活動を直接観察する手段として,役立つております。現在では私達は皮質皮質下脳波を,同時に多数の領域から,記録出来ますので,私達は脳波記録を見れば,個体が睡眠状態にあるか,覚醒状態にあるか,或はまた注意集中状態にあるかを判断出来るようになりました。また発作波を見ると,どういう種類の発作か,それは何処に焦点があるのかということも判るのであります。しかし最もむつかしいのは,脳波を見て,どういう種類の感覚刺激が与えられたのか,どういう末梢反応がおこつたのか,判断することであります。
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