Japanese
English
綜説
生体色素に関する遺伝生化学的研究
Biochemical and Genetical Studies on Natural Pigments
吉川 秀男
1
,
荻田 善一
2
,
藤土 尚三
2
Hideo KIKKAWA
1
,
Zenichi OGITA
2
,
Shozo FUJITO
2
1大阪大学医学部遺伝学教室(理学部)
2大阪大学理学部生物学教室
1Department of Genetics, Faculty of Medicine, Osaka University
2Department of Biology, Faculty of Science, Osaka University
pp.50-58
発行日 1954年10月15日
Published Date 1954/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905794
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Ⅰ.まえがき
私達の一人吉川が惺々蝿や蚤の複眼とか卵に存在する色素と取組んでから既に20年近くの歳月が過ぎた。その間古武彌四郎博士を初めとして多くの優秀な化学者の御助力を得て私の到達した結論は大体次のようなことであつた(Kikkawa1))。すなわちこれらの色素は何れもTryptophanに由来し,Kynurenin,3-Hydroxykynurenineを経て色素が作られ,その各々の段階に一定の酵素が関与し,しかもそれらの酵素の性状を支配するものが遺伝子(Gene)であろうというのであつた。その化学変化は大体図1に示したとおりである。
この一つの遣伝子が一つの酵素を支配するという考えは昆虫のTryptophan系の色素に限らず,各種のアミノ酸やビタミンの代謝などにも適用されることがBeadle一派のアカパンカビ(Neurospora crassa)の研究を初めとして多くの材料について証明され,いわゆる一つの遺伝子は一つの化学反応を支配する(One gene-One cemical reaction),或は一つの遺伝子は一つの酵素の性状を支配する(One gene-One enzyme)という仮説が流布されるようになつた。もちろんこの仮説にはなお幾多の弱点があり,それについての色々な批判も行われている(Bonner2))。
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