Japanese
English
展望
物質代謝と過渡的現象
Thermodynamical Theory of Transient Phenomena and ist Application to Metabolism
杉田 元宜
1
Motoyoshi SUGITA
1
1一橋大學小林生理學研究室
1Kobayashi Institute of Physical Research, Hitotsubashi University
pp.165-172
発行日 1953年2月15日
Published Date 1953/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905697
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まえがき
生物も熱力學的からみると過渡的現象の一つであり,臺所と便所をつなぐ化學的な河の流れである。過渡的現象の解明は物理學や化學の方でもたちおくれていたが,近來次第に盛になつてきた。筆者1)もこの方の研究をずつとつゞけているので,生化學專門の方々の御參考になることをと思つて,かきつける次第である。
過渡的現象の特色として,負エントロピーがあらわれる。そのあらわれる過程は熱力學的には一見逆コースになつていて,その解明は"生命の謎"を解く鍵のようにも思われる。しかしそれは生物だけの特色ではないから,類縁の過渡的現象と生物とを比べてみることが望ましい。またこの逆コースはそれだけをみていても解明されないので,これと熱力學的に相互に作用しあつている全系を考察して,はじめて理解できることである。ふつう生物學では個體の機能や體内の反應にのみ眼を局限するので,いろいろのことが,生物の特異性として大きくうつるのではあるまいか。
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