Japanese
English
報告
酵素による蛋白質の變性—箆麻子より得た一つの酵素
Protein Denaturation by Enzyme
荒谷 眞平
1
,
岩崎 望彦
1
Shimpei ARAYA
1
1東京醫科齒科大學生化學教室
1Dept. of Biochemistry, Tokyo Medico Dental University
pp.173-175
発行日 1953年2月15日
Published Date 1953/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905698
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蛋白質は一定の構造を持ち,その構造によつて,各々特有の機能を營んでいる。從つてその構造がmodifyされゝばその機能も變るであろう。變性によつて酵素其他の蛋白質がその特有の機能を失うのはこの爲であるが,構造のmodificationが單純にその機能を失わさせるのではなく,今迄持たなかつた新しい機能を出現させる可能性も考えられ1),實際cytochrome Cについてその樣なことが報告2)されている。從來蛋白質の變性と稱された現象は分子内構浩のかなり激しいmodificationのみをさしていたが,もつと緩和なmodificationもこれを變性と云うならば,その樣な變性が種々な場合に生體内で起り,夫々特有の生物學的な意味をもつであろうことが想像される1)。とすれば生體内で蛋白の構造をmodifyする樣な酵素も新しく見直され,研究される必要がある。
蛋白質が加水分解される時には先ず第一段階として蛋白質の變性が起るという考えは或る場合には實證3)4)されている。しかし上記の樣に變性の問題を考えてくると,加水分解とは別に唯變性のみを起す酵素の存在も期待される。筆者は以前市販のペプシンの中に卵アルブミンを加水分解せずに唯變性のみを起させる酵素作用のあることを認め5)たが,今回は同樣の酵素作用をもつものを箆麻子より分離したので報告する。
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