論述
筋電圖(Electromyogram, EMG)とその應用
時實 利彦
1
1東京大學醫學部生理學教室
pp.249-254
発行日 1951年6月15日
Published Date 1951/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905586
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1.まえがき
骨格筋の收縮にはその隨伴現象として,筋活動電流の發現を伴う。この筋活動電流を誘導,記録したものを,筋電圖(Electromyogram, EMG)という。筋の收縮は,それが隨意的であつても,或は不隨意的,反射的であつても,機能的には脊髄前角にある運動神經細胞と,それに連なる神經纖維,及び之が支配する筋纖維とから構成されている神經筋單位(Neuromuscular Unit, NMU)の活動と,更にこの活動を支配統禦する運動中樞神經系の活動との表現である。從てEMGは一方筋の收縮の状況を示すと共に,他方之に關與する運動神經系の,活動の樣相を明かにしてくれる。
個々のNMUの興奮活動の際,筋纖維に現われる活動電流は,第1圖(a)に示す樣にある間隔で反復しているスパイク放電である。そして興奮活動の強弱は,スパイク放電の間隔の長短として現われ,興奮活動の強い程放電間隔は短かくなる。從て放電間隔の長短又はその變化の状況から筋收縮の強弱,更に又その際の中樞神經系の活動の樣相を知る事が出來る。之に對して個々の骨格筋全體のEMGは,その骨格筋を構成している多くのNMUスパイク放電のベクトル和であるから,その波形は第1圖(b)に示す樣に複雑である。この場合には中樞神經系の活動の樣相を推測する事は,不可能であるが,その波形の平均振幅から筋收縮の強弱を知る事が出來る。
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