醫學のあゆみ・5
心電圖と脳電圖
杉 靖三郞
pp.36
発行日 1951年12月15日
Published Date 1951/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906982
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どんな細胞でも,それが生きているかぎり電流を出している。それは微小なものであるが,今から160年以上も前にガルヴアーニによつて言い出され,すでに100年前にジュ・ボア・レイモンによつて確かめられた。電氣を發生する魚に,アフリカナイル河産のシビレナマズ,南米アマゾン河にすむシビレウナギ,日本の太平洋岸や地中海にいるシビレエイなどがあるが,これら電氣魚の出す電流は50ボルトから1.000ボルトにも達するつよい電壓の電流であるが,その一つ一つの細胞から出る小さな電流が集りあつて出ているのである。その一つ一つの細胞から出る電流の大いさは,筋肉や神經から出るものと,大きさはちがわないのである。
このようにして,私たちの心臟の筋肉が働いているときには,電流が出ている。それを擴大して適當な方法で電流計に導いて記録すると,獨特の形の電流線曲があらわれる。これを心電圖(Electrocardiogram,エレクトロまたはE. K. G.曲線ともいう)とよぶが,この曲腺圖形は,心臟の働き方によつて異うので,心臟の状態を知り,心臟病の診斷につかわれる。心筋の傷害,冠状動脈の變化など,ほかの方法では診斷がつかないものも,このE. K. G. でみればよくわかる。この心電圖の研究を完成したアイントーベンは1924年にノーベル賞をうけた。
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