論述
人眼網膜の感光物質
水谷 豊
1
1名古屋大學醫學部 眼科教室
pp.182-186
発行日 1950年1月15日
Published Date 1950/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905485
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吾々の眼が如何にして光を感じ,どうして色を感ずるかに就ては己に多數の研究者がこの方面の解明に不断の努力を拂つて來たが,その解決は未完であり從つて夜盲症,色神異常に關する治療法は全く措手傍觀の現状であり,これらの間題の解明は一重大事であると思われる。私は數年來人眼網膜感光物質の本態究明に微力乍ら努力を盡して來たが,最近2,3の興味ある成績を一新實驗方法の下に得ることが出來たのでこゝに發表して世の御批判を得たいと思う。凡て人眼網膜に限らず大低の脊椎動物の網膜は二つの異つた型の感覺器即ち圓錐體視細胞と捍状體視細胞とからなり網膜中央部殊に中心窩には前者が獨占的優位性を示し,網膜の周邊にゆくにつれて後者が増加し前者は減少してゆく。又圓錐體は高照度視力と色に對する特殊感覺器,捍状體は低照度視力を司り,色に關係のない光の一般感覺器であると一般に考えられ,殊にVon Kriesはこの二視細胞の感覺性をスペクトルムに對する夫々の感覺性の差異から分離して所謂二元説の充分な基礎を確立した。
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