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はじめに
本項では,網膜色素変性と生理活性物質とのかかわりを視細胞保護の観点から簡単にまとめてみたい。
網膜内では,いろいろな細胞同士がさまざまな生理活性物質を介して情報や指令を伝達しあっている。これらの因子は細胞増殖因子,サイトカイン,ケモカインなど多種類に及び,それぞれについて日進月歩で研究が進行している。
一方,網膜色素変性は視細胞や網膜色素上皮細胞に特異的ないし,かなり特異的に発現する遺伝子の異常(多くは変異)によって,視細胞に構造上または機能上のストレスがかかる病気である。そのストレスがある時点で閾値に達したときに,細胞死(アポトーシス)の機構にスイッチが入ることにより視細胞変性が始まると考えられる。網膜全体が変性に陥ってしまうような状況では本来視細胞を保護しているようなさまざまな生理活性物質の発現量も減少し,視細胞死が加速度的に促進されることも考えられる。つまり,生理活性物質は網膜色素変性の根本的な原因ではないものの視細胞変性の進行度を修飾する因子となっている。これを逆手にとれば,網膜色素変性の治療法開発という目標にとって,生理活性物質を利用する視細胞保護という観点も1つの重要な柱となりうる。
視細胞保護の要点は細胞死(アポトーシス)をいかに抑制するかという点である。この作用をもつことが知られるいくつかの増殖因子のうち,線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor 2:FGF2),毛様体神経栄養因子(ciliary neurotrophic factor:CNTF),色素上皮由来因子(pigment epithelium-derived factor:PEDF)と血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)についてその作用をまとめる。また,杆体から分泌される錐体保護因子(rod-derived cone viability factor:RdCVF)についても最近の知見を紹介する。
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