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はじめに
網膜中心静脈閉塞症(central retinal vein occlusion:以下,CRVO)は,網膜中心静脈の基幹部分(視神経篩状板)で閉塞が起こり1),静脈内圧の上昇に伴い,うっ滞した静脈血が網膜出血となる。そして網膜全体の循環不全を生じ,無灌流域の形成や新生血管の発生,さらには血管新生緑内障や黄斑浮腫といった視力予後に大きな変化をもたらす病態へと進行しかねない。
フルオレセイン蛍光造影写真において,無灌流域が10乳頭面積以上あるか,あるいは無灌流域を評価できないほどの濃厚な網膜出血がある場合には虚血型(ischemic type),無灌流域が10乳頭面積未満の場合には非虚血型(non-ischemic type)に分類され,虚血型の場合には血管新生緑内障の発症リスクが高いため,網膜光凝固などの積極的治療が推奨されている2)。
従来,内科的治療については線溶療法や抗凝固療法,抗血小板療法などが試みられてきたが,高いエビデンスはまだ得られていないと考えられている。
最近は,光干渉断層計(optical coherence tomograph:以下,OCT)の普及による黄斑浮腫の診断精度の向上に伴い,局所的薬物治療として黄斑浮腫に対するトリアムシノロンの硝子体注射3)やテノン囊下注射4,5),あるいは血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:以下,VEGF)に対する抗体であるベバシズマブの硝子体注射6)がさかんに試みられている。臨床的な効果が報告されているこれらの治療の意義については,眼内生理活性物質であるサイトカインの面から考えてみる必要がある。
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