論述
抗ヒスタミン劑に關する研究(第1報)
中村 敬三
1
,
木村 義民
1
,
根岸 淸
1
,
坂本 行男
1
1日本醫大 細菌學教室
pp.121-125
発行日 1949年10月15日
Published Date 1949/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905467
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緒言
1942年フランスのHalpern1)がAnterganなる抗ヒスタミン劑を創製し,強力な抗ヒスタミン作用と同時に抗アナフィラキシー作用のあることを發表して以來,特にフランス,アメリカに於て抗ヒスタミン劑の研究2)が活溌に行われて來た。また我國に於ても種々の抗ヒスタミン劑が最近創製されるに及んで,アレルギー性疾患の豫防,治療上の問題を含めて特にこの方面の研究は醫學各分野に於て盛んになつて來たように見受けられる。そしてこれが實驗上アナフィラキシーショックに對して有効であり,臨床上ではアレルギー性諸疾患に用いて多大の効果がある旨が報告されたので,アナフィラキシー惹いてはアレルギーの本態をヒスタミンなりとする説に對して甚だ有利な一新事實であるかの感を抱かせたのである。然し乍ら今日迄の海外に於ける抗ヒスタミン劑に關する實驗成績並に研究方法を詳細に檢討してみると,2,3の大きな疑問の個所がないとは言えない。先ずそれ等の點を結論的に述べておくと,
第一には,抗ヒスタミン劑が強力な抗ヒスタミン作用を有するにも拘らず,抗アナフィラキシー作用は決してこれに並行する程強いものではないこと。換言すれば種々の抗ヒスタミン劑の比較試驗の結果を綜合すると最新の抗ヒスタミン劑の抗ヒスタミン作用は著しく増大したにも拘らず抗アナフィラキシー性には左程の優劣はなく,また臨床試驗にも必ずしも著しい差異は認められないということである。
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