Japanese
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特集 ギャップ結合
ギャップ結合の可塑性
Plasticity of gap junctions
松本 明
1
Akira Matsumoto
1
1順天堂大学医学部解剖学教室
pp.635-639
発行日 1989年12月15日
Published Date 1989/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905401
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成体の脳で入力線維の損傷後,変性退化したシナプスに代わって正常な神経線維から軸索終末が発芽して新しいシナプスの形成されることがRaismanによって1969年に発見された1)。これは成体の脳のニューロンがシナプス形成能を持つことに示されるように可塑性に富んでいることを証明したもので,この神経組織の可塑性は神経回路の再構築とか学習や記憶の神経機構に重要な役割を果たすものと考えられてきた。近年,成体の中枢神経系で入力線維を損傷しなくても発芽が起こること2)や生理的な状態を反映したシナプス結合の再構築がみられること3)などが判明し,これらの現象は正常な神経組織で神経回路の構成が変化し,それに応じてその神経回路の駆動する神経機能が変化する可能性を示唆している。これまでに述べてきたシナプスとは,神経伝達物質を含んだシナプス小胞のある軸索終末が他のニューロンと結合する化学シナプスである。ニューロン間のもう一つの刺激の伝達方法はギャップ結合を介した電気シナプスによるものである。化学シナプスの結合様式が可塑性を示すように,ギャップ結合にもこの現象が起こり得るであろうか。
ギャップ結合は隣接する二つの細胞の細胞膜が特殊化した接着装置で,細胞膜を貫くチャネルで構成されている。コネクソンと呼ばれるチャネルは6個の蛋白サブユニットからなり,おのおののサブユニットは中央の小孔を囲むように配列している。
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