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特集 大脳/神経科学からのアプローチ
神経生物学からみた脳の損傷修復とグリア細胞の反応
Repair of injured brains and glial cell reaction
北村 忠久
1
Tadahisa Kitamura
1
1塩野義製薬研究所
pp.90-94
発行日 1989年4月15日
Published Date 1989/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905244
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脳をめぐるホットな話題の一つに損傷を受けた脳の修復と神経再生をめぐる問題がある。脳の傷が修復してくるにつれてグリア細胞による瘢痕組織が形成される。グリア瘢痕には従来は体の他の部分の瘢痕と同様に単に損傷部を補填し,障害が拡散することを物理的に防ぐと言う意義が想定されていたにすぎないが,最近では神経軸索の再生を阻止する因子として注目されるようになった。高等脊椎動物の神経系では再生してきた軸索がグリア瘢痕のために伸長を妨げられてしまうが1),魚類などでは脊髄に起こったグリア瘢痕を再生軸索が通過してゆくことが知られている2)。グリア瘢痕のどの側面が軸索伸長に影響を与えているのであろうか。グリア瘢痕のメカニズムの解明は中枢神経系の機能再生を考える上でも大きな意義があるものと思われる。ここでは生体内に起こっているグリア瘢痕の実態を紹介し,これをめぐる生物科学的な二,三の問題点について述べてみよう。
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