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連載講座 形態形成の分子生物学
ヒトの脳の形態形成とその進化—コンピュータ・グラフィックスによる研究
Morphogenesis of human brain and its evolution : A computer graphics simulation study
藤田 晢也
1
Setsuya Fujita
1
1京都府立医科大学病理学教室
pp.55-68
発行日 1986年2月15日
Published Date 1986/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904830
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生物の形がどうしてできてくるのか,なぜ"そのような形"になるのか,という問題は多くのひとの興味を惹いてきたが,科学的な研究の対象とされることははなはだ少なかった。そのような研究は絶無ではないにしても,生物というシステムの中で形のもつ重要性に比べて著しく少ないことは事実であった。
考えてみると,DNAが自己複製を行ったりRNAを介して情報を発現したりする過程はDNA分子の形に絶対的に依存している。DNAを修飾する蛋白分子やDNAと相互作用する分子はいずれも三次元的な形がDNAと完全にフィットすることが要求される。この方面の情報は最近の結晶解析技術の長足の進歩によってきわめて豊かになってきたのでコンピュータ・グラフィックスの描きだす三次元像を手がかりに私たちは具体的なイメージをもつことが可能になった。蛋白と蛋白の分子間の相互作用や,蛋白とその他の機能的分子の空間的な関係は,その結晶化が難しいようなので,核酸と比べて具体的なデータはまだ少ないものの,作用され作用する分子の間の形の適合性がどのように大きな意味をもつか,はっきりとわかる程度には提示されるようになった。
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