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特集 コンピュータと脳
コンピュータの中の脳―情報基盤の進化論
Omics-driven evolution accelerated by artificial intelligence and databases
豊田 哲郎
1
Tetsuro Toyoda
1
1理化学研究所ゲノム科学総合研究センターオミックス情報統合化研究チーム
pp.20-32
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100144
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システム進化生物学1)によれば,生命の本質は「進化する分子ネットワーク」としてとらえることができる。ここでは,より一般化して“応答ネットワーク”とよぶ。応答ネットワークとは,外界から受ける刺激に対して,並列分散的な情報伝達の連鎖を介して応答するものをいう。生体にみられる応答ネットワークには,免疫系,細胞シグナル伝達系,代謝系,RNA干渉系2)といった,分子認識の相補性で繋がっているものもあれば,神経ネットワークのように細胞線維で空間的に繋がっているものもある。
これらの応答ネットワークに共通する特徴は,R. ドーキンスが「利己的な遺伝子3)」で指摘した“自己複製”がみられる点である。分子ネットワークはゲノムを介して複製され,ニューラルネットワークは文化的なミーム3)を介して複製される。これを永続的に繰り返すことで,応答ネットワークは進化し続けている。本稿で述べるように,コンピュータで実装されている応答ネットワークにも生命に類似の進化現象が観察される。興味深いことに,この応答ネットワークは,単独で進化しているのではなく,生命の進化,社会の進化,経済の進化などと“共進化”している様子がうかがえる。これらが共進化するようになった背景について,最初に“オミックス進化論”から解説する。
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