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特集 コンピュータによる生物現象の再構成
コンピュータ・グラフィックスによる形態形成の研究
Analytico-synthetic study on morphogenesis using computer graphics
藤田 晢也
1
Setsuya Fujita
1
1京都府立医科大学病理学教室
pp.274-283
発行日 1983年8月15日
Published Date 1983/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904532
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生物学や医学のように生きものを対象とする科学の領域で,最もドラマチックなものの1つは形態形成であろう。受精卵から次第に胚盤ができ,神経管が造られ,原始血管が搏動しながら屈曲して心臓を形成し,手や足や頭や顔面にみられる複雑な構造が,体の内部の諸器官の形成と並列に進行する過程でしだいしだいに構築されてくる。これが一体どのようなメカニズムの連鎖によって実現されているのか,真剣に考え始めると,この問題の深さと広さに対して畏怖に似た感慨につつまれない人はないだろう。しかも,この過程はまるで物理現象のような正確さで繰り返し繰り返し再現されるのである。
既に1672年,当時ボローニャにいたMarcello Marpighiが鶏胚の形態発生を研究し,"De formatione pulli inovo"と題する原著としてロンドンの王立協会に発表したのが近代におけるこのジャンルの研究の嚆矢であると思われる1)。ただ,この論文は嚆矢ではあったが既に1つの完成した風格を備えていた。その中で彼は,発生しつつある個体や諸器官の形態変化を客観的に記載することの意義を達者なスケッチを混えて呈示し,同時に胚発生がpreformativeなプロセスによって展開するという考えを述べた。彼のこの論文の影響は大きかったように思われる。
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