Japanese
English
特集 受容・応答の膜分子論
タンパク質メチル化反応と走化性
Protein methylation and chemotaxis
林 博司
1
,
蓑島 伸生
1
Hiroshi Hayashi
1
,
Shinsei Minoshima
1
1名古屋大学理学部分子生物学研究施設
pp.361-367
発行日 1983年10月15日
Published Date 1983/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904543
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生物はその特性のひとつとして,環境の変化を感知し,得られた情報に従って自分の置かれた状況を変化させ得る。こうした広い意味での感覚応答について言えば,多くの場合応答はその生物の運動の制御という形で現われる。典型的な感覚応答系は,高等生物の神経系およびホルモン分泌系であり,そこでは個体レベルでの高次な感覚応答が起こる。より低次には,受精における精子と卵子の挙動,胚発生における,たとえば神経系形成に伴う細胞個々の正確なふるまい,イモリやプラナリア等で知られる再生現象における細胞の脱分化および分化等,すべて細胞レベルでの感覚応答が必須な現象と言えよう。高等生物における感覚応答の機構は,上に挙げたような材料を用い,主に電気生理学の手法,形態学の手法を用いて研究され,多大な成果が挙げられている。こうした感覚応答系を分子レベルで解析するためには,いくつかの困難がある。たとえば,生化学の手法で研究をするために充分な量の標品が扱えないこと,あるいは,ある現象について因果関係を確立するためには,系が複雑すぎること等である。
近年,生物の研究に有利な材料として,原核生物であるバクテリアが盛んに用いられるようになった。豊富な遺伝学の手法を駆使できること,遺伝的に同じ個体が大量に扱えることなどがその利点である。
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