増大特集 生命動態システム科学
Ⅰ.定量生物学
1.分子・細胞の計測
2)1分子計測
(2)1分子イメージングによる走化性情報伝達系の動態解析
松岡 里実
1
,
上田 昌宏
1,2
Matsuoka Satomi
1
,
Ueda Masahiro
1,2
1理化学研究所 生命システム研究センター 細胞シグナル動態研究グループ
2大阪大学大学院 理学研究科 生物科学専攻
pp.394-395
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200006
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■1分子の運動・反応にみられる多状態性
細胞内では様々なシグナルが分子の多状態性を利用して伝達される。例えば,細胞外のリガンドの結合によって受容体の状態が変化すると,Gタンパク質のヌクレオチド結合状態や,その下流で働く分子のリン酸化・脱リン酸化状態が連鎖的に変化してゆくことで,細胞の応答が引き起こされる。こうした分子反応ネットワークの動態を明らかにするためには,分子の多状態性と状態間遷移の時空間的なダイナミクスを解析する技術が必要となる。
1分子イメージングでは,生きた細胞の細胞膜上でまさにシグナル伝達の現場にいるシグナル分子の個々の挙動を直接的に可視化できる1)。標識に用いた蛍光色素の位置の時系列変化からは拡散係数を,蛍光色素が観察された時間からは細胞膜解離反応のキネティクスを推定できる2)。これまで分子が複数の状態をとる場合に,個々の状態に特有の拡散係数や解離速度定数,さらには状態間遷移反応の速度定数を推定する方法論(lifetime-diffusion解析法)を開発してきた3)。
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