Japanese
English
主題 Polysaccharide・2
結合組織の素物質としてのムコ多糖—タンパク質複合体—分子進化,分子分化,生合成
Mucopolysaccharide-protein Complexes: Elementary Substances of Connective Tissues
鈴木 旺
1
Sakaru Suzuki
1
1名古屋大学理学部化学教室
1Department of Chemistry, Nagoya University
pp.62-75
発行日 1968年4月15日
Published Date 1968/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902765
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Ⅰ.はじめに
皮膚,軟骨,腱,大動脈など一般に動物の結合組織(connective tissue)といわれる部分は細胞外基質(matrixあるいはground substanceと呼ばれ複雑な多糖とタンパク質より成る複合体)を豊富に含んでおり,各細胞はそれら豊富な基質にとり囲まれて存在している。したがつて,結合組織としての性質や機能を直接支配しているのは,細胞というよりはむしろ細胞外にある基質高分子成分の性質である。たとえば,結合組織の強さ,柔らかさをはじめ,組織内でのカルシウムの平衡と沈着,物質透過,水の保持などに果たす基質の役割は大きい。そしてこのような複雑な高分子成分を合成し分泌する働きをする点が,結合組織の細胞に共通した特徴ということができる。
これら結合組織は一つの動物個体についてみても,構造的,機能的に非常に異なるものが分布しているが,これを広く生物界全般について比較してみると,ひとくちに結合組織といつても,それらの構造や機能にはかなりの巾がある。このことはまた,結合組織を構成する細胞外基質成分の多様性をも示唆している。すなわち,結合組織の"素物質"の構造や生合成を研究することは,とりもなおさず,この特別な組織の分化や進化に伴う細胞の合成分泌機能の変化および基質高分子の構造変化の様相を明らかにすることにほかならない。
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