巻頭言
研究のための底辺組織の改善
佐藤 昌康
1
1熊本大学
pp.113
発行日 1967年6月15日
Published Date 1967/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902725
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10年程前,私が英国から日本へかえつて新しい研究室を創設しようとした時,欧米の研究室が羨ましいと思つたことは,研究費の額が日本に比べて大きいということは別にして,英国やスェーデンの研究室では多数の技術者と実験補助員がいて研究のための各種の補助をしてくれるということ,有能な秘書がいてすべての事務的用事とタイプライティングをしてくれるということであつた。それで研究に必要なその種の補助的人員をなるべく確保しようと,過去においていろいろ努力したのであるが種々の制限のために過去10年間の間に何等の改善もなされていない。以上のことは私の研究室に限られたことではない。広くわが国において基礎医学研究の場というものが過去20年間に本質的な改善がなされていないということを感じる。かえつて,定員不補充の問題とからみあつて,事態は悪化しているといえる。もちろん戦後20年の間に各大学医学部の講座費,科研費の額は年々増額されているし,関連技術の進歩により研究に必要な国産機械を比較的容易に購入しうるという点では,過去20年の間に進展があつた。またわが国全体でいえば各大学における講座の増設が逐次なされて研究人口が漸増したという点でも,基礎医学における発展はあつたといえる。しかしなお,私はわが国における基礎医学研究の場というものは,本質的には過去20年の間に改善されていないということができると思う。
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