特集 現代の看護学生
職業のモラルと協力のモラル—職業教育の底辺をささえるもの
城塚 登
1
1東京大学
pp.7-10
発行日 1964年7月1日
Published Date 1964/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905311
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職業とプライド
「〈職業〉を意味するドイツ語のBerufという語のうちにも,またおなじ意味合いをもつ英語のcallingという語のうちにも,一そう明瞭に,ある宗教的な—神から授けられた使命という—観念が少なくとも他のものとともにこめられており,実際にあたってこの語に力点をおけばおくほど,それが顕著になることは,見おとすことのできない事実である。」
これはマックス・ヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の一節にある文章である。1年あまりヨーロッパに生活した私は,折にふれてこの文章を想いだしたのであった。ヴェーバーの説いているのは,近代の資本主義を発展させたひとびとを内面から支えていた倫理は,プロテスタントのなかに典型的なかたちで認められるが,この倫理の主要な特徴は,世俗的な職業労働に誠実に励み,その義務を忠実に遂行することが,ただちに神より与えられた使命を果たすことを意味すると考えられた点に求められる,ということであった。つまり,職業労働に励むことがそれ自身高い価値をもつことが,神の名において保証され,すべての正当な職業が神の前でまったく平等な価値をもつとされたのであり,こうした行動の態度が,あの近代ヨーロッパの驚異的な発展の原動力となったと説かれるのである。
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