特集 病気の分子細胞生物学
4.消化器疾患
胃潰瘍
平石 秀幸
1
,
島田 忠人
1
,
寺野 彰
1
Hideyuki Hiraishi
1
,
Tadato Shimada
1
,
Akira Terano
1
1獨協医科大学消化器内科
pp.414-415
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901746
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[疾患概略]
胃潰瘍(GU),十二指腸潰瘍(DU)を含む消化性潰瘍は消化管壁を構成する粘膜,粘膜筋板,粘膜下層,固有筋層,漿膜の5層構造のうち,粘膜筋板をこえる良性の組織欠損と定義される。消化性潰瘍の成因として,従来,粘膜組織に対する攻撃因子(酸・ペプシン)と防御因子の不均衡によるとするShay & Sunのバランス説が唱えられてきた。近年では,その病因を1)Helicobacter pylori(H. pylori)感染,2)非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs),3)胃酸過分泌による消化活性の亢進(Zollinger-Ellison症候群),4)その他(クローン病など),に集約する考えが提唱されている。
特に,消化性潰瘍の患者におけるH. pylori感染率は極めて高く,H. pylori感染をnested-PCRを用いて検出感度を高めると,その陽性率は約95%前後となる1)。実際,前向きのコホート研究の結果では,H. pylori感染のGU. DU発症に対するオッズ比はそれぞれ3.2(95%信頼区間:1.6-6.5),4.0(95%信頼区間:1.1-14.2)と算出されている。H. pyloriは慢性活動性胃炎の主要な病因であることは確実で,その除菌は消化性潰瘍の再発を著明に抑制し,また最近ではMALTリンパ腫,胃癌の成因の一つとしても注目される。
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