図解・病態のメカニズム 胃疾患・2
胃粘膜防御機構
平石 秀幸
1
,
島田 忠人
1
,
寺野 彰
1
1獨協医科大学消化器内科
pp.2047-2050
発行日 1999年12月10日
Published Date 1999/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906611
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はじめに
“胃粘膜は,何故胃内腔に存在する強力な胃酸/ペプシンによって消化されないのであろうか?”との疑問こそが胃粘膜防御機構の本質であり,その概念は,消化性潰瘍の発生が攻撃因子と防御因子の不均衡に基づくとのバランス説から派生したものである(図1,Shay & Sun).胃粘膜防御機構に関する研究は,Hollanderのtwo componenttheory,Davenportの胃粘膜関門(gastricmucosal barrier),backdiffusionなどが重要なものである(表1).これらの学説は,胃酸に対し粘液/重炭酸,粘膜上皮が抵抗性を発揮するが,いったんアスピリンなどのbarrierbreakerによって胃粘膜関門が破壊されると,胃酸(H+)の粘膜内への逆拡散,mast cellなどからのヒスタミンの遊離が起こり,その結果微小循環の障害から,出血,びらん・潰瘍形成に至るとの仮説である.1979年,A. Robertらはprostaglandin(PG)による胃粘膜細胞保護作用(cytoprotection)という現象を見い出し,その後の1982年,MarshallらはHelicobacter Pylorzi(H. Pylori)の分離培養に成功した.これら二つの業績は,潰瘍発生の成因論,胃粘膜防御機構研究にとり一大転機となった.
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