特集 病気の分子細胞生物学
1.筋・神経・精神疾患
精神分裂病
有波 忠雄
1
Tadao Arinami
1
1筑波大学基礎医学系遺伝医学部門
pp.396-397
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901740
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[疾患概略]
精神分裂病は主として思春期,青年期に発症し,種々の程度の残遺障害を残す一群の疾患である。思考,知覚,情動,動作,行動に関わる多彩な症候が様々な組み合わせで現れる。経過は通常慢性的であり,多くの分裂病患者は自分の能力を十分に発揮できず,複雑な仕事はできないか,あるいは仕事そのものができない。対人関係も種々の程度失われる。耐え難い症状のために,自殺に至る頻度も高い。罹病危険率はおおよそ0.8%,有病率は0.3%と頻度が高く,精神分裂病は莫大な人的,経済的な損失を人類に与えている。
精神分裂病の多彩な症状は,陽性症状と陰性症状に大きく分けられる。陽性症状は華々しい産出性の症状で,陰性症状は欠陥あるいは欠損性の症状をいう。陽性症状には幻覚や妄想,緊張病様の行動,思考の滅裂,奇妙な行動などがある。また,陰性症状は感情の平板化,思考の貧困,意欲の欠如,快感消失,注意力の低下などがある。
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