社会病理と精神衛生・2
精神分裂病の疫学
高木 隆郎
1
1京都大学医学部付属病院精神科
pp.78-79
発行日 1963年10月1日
Published Date 1963/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661912045
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内因性精神病と心因
精神分裂病や躁うつ病といったいわゆる内因性精神病が,むかし考えられていたようにたんに遺伝素因的なものだけを原因として考えていたのでは不十分で,それらの発病には種々の心的葛藤(コンフリクト)や過労などがかなり重要な役割をはたしているという考えは,すでに今日の精神医学の常識となってきている。このことのひとつの証明は,セシュエー(村上・平野訳):分裂病少女の手記(みすず書房),ビンスワンガー(新海・宮本・木村訳):精神分裂病I・Ⅱ(みすず書房)などの書物でしることができる,分裂病の心理療法の可能性であろう。
精神病の心因性の追求へのもうひとつの方法は,精神障害者の生態学的調査とか,精神病の疫学とかいわれているもので,地域の社会学的条件や環境条件などによる精神病の出現率の差異をしらべ,そこに非生物学的要因がどれだけ関与しているかを明らかにしようというものである。
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