精神医療の管理
分裂病と精神病院
竹村 堅次
1
,
福井 東一
2
1昭和大学付属烏山病院
2初声荘病院
pp.91-98
発行日 1972年8月1日
Published Date 1972/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204744
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.入院,退院,再入院をめぐって
患者構成の変化
この10年ほどで,精神病院の在院者の疾病別の変化はある程度まで有意の差を示している(表1).10年前といえば,わが国では薬物療法の普遍化とともに,開放療法の幕あけ時代であり,精神病院でも精神療法が論じられ,さらには地域精神医療も強調され,中間(昭和40年)にこれに見合う精神衛生法の改正も不十分ながら行なわれた.これは精神医療の歴史からみてもかなり大きな変化といえる.しかし新しい時代にふさわしい精神障害者のリハビリテーションを中心とする患者処遇は,社会の受け入れ態勢,諸制度の未整備という条件下で,非常に困難な業務遂行を精神病院にシワ寄せしている現状でもある.
したがって病院の治療方式も大幅に変わり,いつも中心課題となっている精神分裂病の治療効果も,ここで総合的に再評価される気運にあるが,リハビリテーションを目標に分裂病者の処遇を改善しようとすれば,悪条件はいろいろある.しかしともかくも患者は動き,対応して病棟構成も変化する.表1では在院者の1,2位に分裂病,精薄と並ぶ点は10年間で変わらないが,分裂病が圧倒的に多く,10年でさらに10%以上も増えているのが注目される.進行麻痺が5位に転落したのも次に目立つ特徴であるが,その他の疾患はてんかんと躁うつ病を除けば数字のうえで問題にならぬほど少ない.
Copyright © 1972, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.