特集 神経学における最近の研究
<生化学>
アセチルコリン受容体
吉田 博
1
1大阪大学医学部薬理学教室
pp.726-727
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904910
- 有料閲覧
- 文献概要
1905年,LANGLEYはニコチンやクラーレが筋肉表面のある特定の部位に結合することによりその作用を現わすとの考えを示した。これがアセチルコリン(Ach)受容体(receptor, R.)なる概念についての最初の発表と思われる。その後,表面の細胞膜の特定の部位にはめ込まれAchと結合し,Achの筋収縮などの反応を引き起すものをAch・Rと一般に呼ぶようになった。Achが運動神経副交感神経,神経節などのシナプスの生理的刺激伝達物質であることが確立されAch・Rはシナプス後膜に存在することが明らかになった。これらのAch・RはAchの他,種々のコリン作働薬,コリン遮断薬に親和性を持ち,これらの共通の作用部位と考えられてきた。通常これらの薬物の親和性の差によりニコチン様受容体とムスカリン様受容体とに分類される。具体的にはニコチン様受容体にニコチン,d-ツボクラリンなどが,ムスカリン様受容体にムスカリン,オキソトレモリン,アトロピンなどが高い親和性を持つ。このように機能と直結した結合部位という意味でAch・Rは20年前にもすでに馴染み深いものであった。しかしそれはどこまでも抽象的な概念といってよく,その実体についての知識はきわめて乏しいものであった。
20数年前,1952年にLuはトリプシン処理でAchの作用が消失することからAch・Rは蛋白質であろうと主張した。その後KARLINはAch・RにおけるS-S結合の重要性を示した。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.