特集 神経系に作用する薬物マニュアル1998
Ⅳ.代謝的に作用する薬物
アセチルコリンエステラーゼ
田中 健一
1
,
小川 紀雄
2
Ken-ichi Tanaka
1
,
Norio Ogawa
2
1埼玉医科大学第一生理学講座
2岡山大学医学部分子細胞医学研究施設
pp.472-474
発行日 1998年10月15日
Published Date 1998/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901641
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アセチルコリンエステラーゼ(AChE)は神経伝達物質であるアセチルコリン(AChR)の分解酵素として,アセチルコリン受容体(AChR)近傍に局在する。AChEは中枢神経系・骨格筋・赤血球・運動終板などに多く存在する。一方,平滑筋や血清中にはブチルコリンエステラーゼ(BuChE)が多く存在するが,100%阻害してもヒトの機能には影響しない。ただし,薬効の特異性を考える上で重要である。AChEに直接作用する薬物の多くは酵素活性を抑制する阻害剤であることから,本稿では治療を目的としたAChE阻害剤を中心に記した。AChE阻害剤には,治療薬以外にも農薬である有機リン系殺虫剤やカーバメート剤,サリンなどの神経ガスが含まれる。特に農薬類は日常でよく認められる中毒の一因として重要であるが,紙面の都合で省略した。現在治療薬としては,重症筋無力症(MG)や緑内障(Gla)を対象とした薬剤とPamが主なものである。また,第一世代の抗痴呆(ATD)薬の多くはAChE阻害剤である。本邦では開発中だが,欧米では既にtacrine,donepezil,rivastigmineが認可され,AChE阻害剤の新しい可能性が示された。なお,抗ATD薬の多くは開発中のためデータが公開されているものに限定した。また,できる限り最新データを参考にしたが,updateな情報についてはインターネットによる検索aをお奨めする。
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