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連載講座 新しい観点からみた器官
乳腺―ヒト授乳期乳腺の微細構造と乳汁分泌の形態学的メカニズム
Mammary Gland: Ultrastructural Aspects of Human Lactating Mammary Gland and Morphological Mechanism of Milk Secretion
黒住 昌史
1
Masafumi Kurosumi
1
1埼玉県立がんセンター臨床病理部
pp.148-156
発行日 1996年4月15日
Published Date 1996/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901075
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乳房は哺乳動物に特有な器官であり,生後まもない乳児は母親から母乳を介して水や栄養分など生きていくために必要な物質を供給される。従って,授乳は哺乳動物にとって最も重要な行動の一つであり,これが阻止された場合には種の保存さえ危うくなる。しかし,現代ではヒトにおいては,乳房は「女性の美の象徴」としてのみ扱われ,本来の授乳という重要な機能は忘れさられてしまったかのようにみえる。ひとつには他人の母乳を譲りうけることもできるし,人工栄養も改良されて極めて母乳に似た成分になったからであろう。しかし,一方では母親とのスキンシップを得ることや感染防御のための免疫グロブリンを獲得できるということなど,授乳の重要性が再認識されている。
乳汁分泌の形態学的なメカニズムについては,すでにいくつかの電子顕微鏡学的な研究が行われている。また,近年になって免疫組織化学的方法が細胞機能のメカニズムの解明に取り入れられるようになった。最近,われわれは電子顕微鏡学的観察に免疫組織化学的方法を加えて,ヒトの乳腺におけるカゼインの局在について新しい知見を得ることができたので,本総説では,最初に乳腺の構造と機能について述べ,次に新しい知見について紹介することとする。
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