特集 現代医学・生物学の仮説・学説
6.免疫学
自己免疫
宮坂 信之
1
,
斎藤 一郎
1
1東京医科歯科大学難治疾患研究所ウイルス・免疫疾患研究部門
pp.582-583
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900653
- 有料閲覧
- 文献概要
概説
生体は自己に対して過剰な免疫応答をおこさない。このように調節している仕組みを免疫調節機構とよぶ。しかし,免疫調節機構に異常が生ずると,自己の成分に対して抗体を産生したり,あるいは感作リンパ球が出現することとなる。このような状態を自己免疫という。Ehrlichは自己免疫によって個体が滅びることを「Horror autotoxicus」とよんだ。そしてBurnetは有名なクローン選択説において,自己に反応するクローンは「禁止クローン」として消去されてしまう,とした。一方,自己免疫現象によって病的状態が生じた場合には,自己免疫疾患とよんだ。
生体が自己の成分に対して無反応であることを『寛容』(トレランス)という。寛容が成立する機序として,自己反応性クローンの除去(clonal deletion),麻痺(paralysis,anergy)などがある。このような寛容状態が何らかの刺激により破綻すると,自己免疫がおこることになる。現在,寛容の形成機序については精力的に検討が行われており,この機序の解明は自己免疫疾患の予防,治療につながるものと思われる。
Copyright © 1993, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.