特集 現代医学・生物学の仮説・学説
6.免疫学
リンパ球のホーミング
横山 三男
1
1久留米大学医学部
pp.576-577
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900651
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概説
生物体を構成する体細胞の1つ1つは,細胞膜によって包まれており,細胞の形態,構造ならびに機能を維持するために,細胞外から酸素や栄養素を取り入れ,細胞内では核酸やタンパク質を産生し,それらのエネルギーによって細胞は内外の環境に順応しながら生命を保っている。生物は細胞の集合体であり,これら個々の細胞ならびに細胞集団によって構成された細胞社会として機能している。細胞の有機的な構築を機能化するためには,細胞と細胞とが互いに情報を交換し合いながら,細胞の機能を互いに調節し,細胞の集団社会をバランスよく,しかもリズミカルに活動させる必要がある。
細胞膜は,それゆえに,多様化した分子を埋蔵しており,細胞は,その遺伝子背景や遺伝子の再編成によって多様化した形質を膜表面に発現している。それらの形質は,細胞の由来,細胞の分化段階,さらには細胞の機能を標示する機能分子でもある。そのほか,情報(リガンド)の受容体(レセプター)や接着分子として細胞の機能に関与する分子でもある。しかも,これらの細胞は,発生母体から分裂,増殖し,それぞれの細胞群として系統化される。それゆえ生体を構成する細胞は,その発生母体ごとに細胞集団として系統化されてゆく。無秩序に異なる系統の細胞が混在してゆくことはない。このような細胞の生物学的な行動は,細胞の膜表面に存在する接着分子によって調節され,制御されている。
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