特集 現代医学・生物学の仮説・学説
6.免疫学
抗原認識の機構
中島 泉
1
1名古屋大学医学部免疫学教室
pp.574-575
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900650
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概説
Jenner(1798)やPasteur(1878)によって発見された生体による抗原認識の物質的な基盤(抗体)を最初に示したのはBehringと北里(1890)であった。続いて,細胞がつくる側鎖(抗体)によって抗原を鍵と鍵穴の関係で認識するモデルが仮説としてEhrlich(1901)により示された。抗体による抗原認識の分子機構が明らかとなったのは,PorterとEdelman(1959)によって抗体の一次構造が解明された時である。一次構造の解明に続いてX線結晶回折のデータの解析(Schiffler,1973)などから抗体の立体構造モデルが示され,抗体による抗原認識における鍵と鍵穴の関係が実証された。
抗体による抗原認識の分子機序が明らかにされる一方,1960年代に発見された2種類のリンパ球のうち,Bリンパ球の抗原レセプターが抗体であることがまず知られた。Tリンパ球の抗原レセプター(TCR)の本態については長い間,諸説があったが,1984年にその遺伝子が分離されて結論が出された(Hedrik & Davis;柳 & Mak,1984)。これより前,T細胞による抗原認識に主要組織適合(MHC)抗原が関与することが,その遺伝調節(Benacerrafら,1963)とMHC拘束(Zinkernagelら,1974)により示された。
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