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特集 自然免疫における異物認識と排除の分子機構
カブトガニの異物認識の分子機構
Molecular mechanism of nonself recognition in horseshoe crabs
川畑 俊一郎
1
Shun-ichiro Kawabata
1
1九州大学大学院理学研究科生物学専攻
pp.187-193
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902112
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無脊椎動物の生体防御反応においては,抗体産生系の欠除のために,非自己認識レクチンや抗菌性物質1-3),フェノールオキシダーゼ系4)などの自然免疫が主役である。古生代に繁栄をきわめた三葉虫を先祖とするカブトガニは,現在は,北アメリカ東岸と中米ユカタン半島沿岸,アジア大陸の東南海域沿岸に計4種が分布し,九州北部沿岸にはTachypleus tridentatusが棲息している。分類学的には,節足動物門,節口綱,剣尾目に属し,エビ,カニなどの甲殻綱よりもクモ形綱に近縁である。T. tridentatusの体液中に存在する血球のほとんどは一種類の顆粒細胞で占められ,その顆粒細胞内には,密度が異なり超遠心機で分離可能な大,小二つの顆粒があって,体液凝固因子,プロテアーゼインヒビター,レクチン,抗菌物質など生体防御関連因子が選択的に貯蔵されている2)。
この顆粒細胞はグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖(Lipopolysaccharides;LPS)に鋭敏に反応して,顆粒成分を細胞外へ分泌する。その結果,瞬時に体液凝固のセリンプロテアーゼカスケードが起動して体液の流出が阻止される2)。同時に,侵入した微生物はレクチンにより凝集されて異物認識と排除を誘発し,抗菌物質で殺菌されるとともに,最終的には創傷治癒といった一連の生体防御反応を引き起こすと考えられる。
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