Japanese
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連載講座 新しい観点からみた器官
味覚器-味覚における甘味受容機構研究の新しい展開
New aspects on the study of sweet receptive mechanism
二ノ宮 裕三
1
,
井元 敏明
2
,
日地 康武
2
Yuzo Ninomiya
1
,
Toshiaki Imoto
2
,
Yasutake Hiji
2
1朝日大学歯学部口腔生理学教室
2鳥取大学医学部第一生理学教室
pp.365-373
発行日 1993年8月15日
Published Date 1993/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900584
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日本で出版されている医学生向けに書かれた生理学の教科書のどれをみても,感覚を扱った章の中で味覚についての記述は視覚や聴覚に比べてきわめて少ない。これは医学部における生理学がヒトを念頭においたものである以上,ヒトにおける味覚というものの重要度が,この程度であることを意味しているのであろう。たしかに,ヒトが感覚器をとおして受け取る外界からの情報量が視覚や聴覚によるものが圧倒的に多いことは,感覚器からの求心性情報を伝える神経線維の本数を単純に比較するだけでも推測できる。たとえば,視神経は数百万本の線維から成っているのに対して,舌前半部の味覚情報を伝える線維の数は,たかだか数千本にすぎない。
ところが,広く生物界をみてみれば明らかなように,味覚や嗅覚などのいわゆる化学感覚は,個体の維持ばかりでなく種の保存にとっても大きな役割を果たしている。味覚についていえば,摂取すべき食物の選択,不必要または害となる物質からの忌避行動を引きおこす直接の情報をもたらす一方,その情報は自律神経系を介して,消化液やホルモンの分泌を調節している。このような認識からすれば,味覚の研究はもっと進んでもよさそうに思われるが,他の感覚に比べると,その華々しさにおいて,また分子レベルでの理解において随分と遅れているようにみえる。
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