Japanese
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特集 感覚情報の処理機構
味覚情報の処理機構
Processing of information in the gustatory nerve system
佐藤 昌康
1
Masayasu SATO
1
1熊本大学医学部第2生理学教室
1Second Department of Physiology, Kumamoto University Medical School
pp.628-638
発行日 1972年8月10日
Published Date 1972/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431903417
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Ⅰ.第一次ニューロンにおける味の質のパターン
味の感覚に4種の基本的な味を仮定し,あらゆる味の感覚はこの4種の基本的味覚の混合によるとする考えは,19世紀の末以来のことである。このような考えに沿ってHenningは酸,甘,苦,塩味の四基本味を頂点とする正四面体を考え,あらゆる味はこの正四面体の内部または面上の一点であらわされると考え,Skramlikは,種々の物質の味を四基本味を代表する液の混合によってあらわす方程式を提起した。上記のいわゆる四原味説(four modality taste theory)から帰結されることは,味覚情報を伝える神経線維は,ただ1種の基本味のみに特異的に応答し,その情報のみを中枢に伝えること,このような特異的な線維を種々な程度に伝えられた四基本味の情報が中枢で混合されて複雑味の感覚がおこる,ということである。
しかしこのような仮説が,神経生理学的実験による結果と合致しないことは,古くPfaffmann1,2)らの実験によって明らかにされたところである。事実,多くの哺乳動物で味覚を伝える鼓索神経線維のインパルスを記録してみると,四基本味を代表する液による刺激に対し,その2種以上に対し1本の神経線維が応答する。しかしその応答の様式や大きさは,それぞれの線維によって少しずつ異なっているのである。
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