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あとがき
松田 道行
pp.278
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201364
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巻頭言で触れられているように,エルヴィン・シュレーディンガーやマックス・デルブリュックらの物理学者の参入が分子生物学の幕を開けたと言っても過言ではありません。しかし,そこから始まった研究はバイオテクノロジーとしては爆発的に広がったものの,生命を物理学の理論で説明するという哲学の部分は,置き去りになった感が否めません。計測技術が追い付かなかったことがその理由と私は考えています。バクテリオファージや細菌から高等生物へと研究のターゲットが移るに伴い,計測結果は定量的なものから定性的あるいは半定量的なものへと劣化し,理論的研究が困難になったのではないでしょうか。今回の特集をみれば,顕微鏡イメージングに代表される計測技術の進歩が定量的データをそしてそれが理論を生むのだということがわかる気がします。そしてもう一つ,コンピュータサイエンスという新たな技術が生物物理学をエキサイティングな分野にしていることにも言及すべきでしょう。しかし,残念なこともありました。いつもであれば特集の原稿を通読するのに何日もかかることはないのですが,今回は,たいへん中身の濃い原稿が多く,数式を前に何日も唸ってしまいました。
最後になりましたが,ご多忙中のところを編集いただいた青木先生ならびにご寄稿いただいた諸先生方にお礼申し上げます。また,実験講座で空間的トランスクリプトームをご紹介いただきました鈴木先生,3回にわたりに顕微鏡の連載講座をご執筆いただきました磯部先生にも改めてお礼申し上げます。
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