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あとがき
松田 道行
pp.184
発行日 2020年4月15日
Published Date 2020/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201151
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科学技術立国の危機を訴える本をよく目にするようになりました。諸外国が軒並み科学研究費を増額するなか,日本のみがバブル以降ほとんど研究費が増えておらず,将来に暗雲が立ち込めています。身も蓋もない言い方ですが「研究は金である」のは間違いありません。今回特集したビッグデータに基づくゲノム研究などは象徴的な例でしょう。何サンプルをシーケンスできるかなと財布の中を覗きながら研究する業界です。そういう逆境のなか,今般の特集では,日本人に多い疾患に光を当てたり,工夫を凝らした解析法で新たな局面を開いたりした研究が紹介されており心強く思いました。とはいえ,やはり,研究費の問題に科学者がもっと声をあげるべきだと思います。お金が少ないから,選択と集中をするという政府の考え方は間違っていると思わざるをえません。ムーンショットプロジェクトでは,8つのプロジェクトに毎年1,000億円をこえる金額を投入するそうです。誰かが考えた「当たったらいいな」なんて知れている。それよりは若い研究者にばらまいて,10年後に「“なにか”が出たらいいな」と期待したほうがよっぽどいい。科研費の総額が2,300億円ですから,ばらまけば,一人当たり50%アップになります。「ばらまき」を目の敵にしていたのはどの政党だったか忘れましたが,「花咲じじい」プロジェクトとか銘打って,研究費を広くばらまくような知恵者が政治家にいてくれたらよかったと思います。
最後になりましたが,ご多忙中のところを編集いただいた池川先生ならびにご寄稿いただいた諸先生方にお礼申し上げます。
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