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あとがき
松田 道行
pp.188
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200129
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生命科学は,本来“Descriptive Science”であると思います。しかし,一線の研究者にとって“Descriptive”という単語は,今や論文の重要性を否定する編集者からの単語として忌まわしい印象すらあります。生命科学をこのDescriptive Scienceから脱皮させた推進力は,生化学,分子生物学,遺伝学的手法による分子作動原理の解明でしょう。本号で久保田氏が紹介された研究は,“なぜ網膜には血管が少ないか”という生物学の疑問に答えるにあたり,分子生物学・遺伝学的研究手法がいかにパワフルかを如実に示しています。一方,生命科学研究をさらに加速するためには,生きた細胞・組織で特定の分子を観察・操作する技術が必須です。ケミカルバイオロジーは,このような時代のニーズに伴って発展しつつある学問分野ですが,生命科学者にとって決して身近な存在ではありません。本特集で紹介されているツールは,「お,これは使える。あ,これもいける。」と生命科学者にはおもちゃの玉手箱のように思えます。来年は,細胞生物学会とケミカルバイオロジー学会の合同年会も開催されます。日本人は異分野融合が苦手だとよく言われますが,この特集を契機に生命科学者と化学者の共同研究がどんどん始まることを祈っています。なお,本号には新たな実験動物特集第2弾としてフェレットが紹介されています。脳科学は“生物学最後のフロンティア”と呼ばれて久しいですが,フェレットやマーモセットなどの新たな実験動物がどのようなブレークスルーをもたらしてくれるのか,期待に胸が膨らみます。
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