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特集 生物物理学の進歩—生命現象の定量的理解へ向けて
Ⅰ.分子レベル
成体組織恒常性維持機構の統計物理
Statistical physics of tissue homeostasis
川口 喬吾
1
Kawaguchi Kyogo
1
1理化学研究所開拓研究本部生命機能科学研究センター生体非平衡物理学理研白眉研究チーム
キーワード:
成体組織恒常性
,
組織幹細胞
,
細胞間相互作用
Keyword:
成体組織恒常性
,
組織幹細胞
,
細胞間相互作用
pp.196-200
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201347
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われわれヒトを含む哺乳類は,成体の大きさまで成長したのち,その発生に要した時間よりも長い時間,ほぼ定常な状態を保つことができる。この定常に達した成体組織の中をのぞいてみると,実は細胞分裂と細胞分化が盛んに営まれており,細胞供給とロスが絶えず繰り返される非平衡な定常系になっていることがわかる。実際,われわれの体を構成する約35兆個の細胞のうち,約1%の細胞が毎日失われ,再生産されているといわれている。
成体組織において,発生や細胞ロス・再生産のターンオーバーよりもずっと長い時間にわたって恒常性が安定に保たれているのはなぜなのか。この問題に関わる研究の蓄積は多く,ここですべてを紹介することはできないが,本稿では分子的なメカニズムの詳細を脇に置き,数理モデルの視点を重視しつつも数式は避け,概念的な進展の歴史をたどっていくことにする。
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