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特集 心臓の発生・再生・創生
Ⅰ.心臓の発生と進化
心臓の起源─心筋分化と区画化形成
Origins of the hearts; mechanisms of cardiomyocyte differentiation and chamber formation
小柴 和子
1
Koshiba-Takeuchi Kazuko
1
1東洋大学生命科学部応用生物科学科
キーワード:
心臓
,
進化
,
平滑筋
,
心筋
,
中隔形成
Keyword:
心臓
,
進化
,
平滑筋
,
心筋
,
中隔形成
pp.509-513
発行日 2017年12月15日
Published Date 2017/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200720
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心臓とは何か? 最もわかりやすい説明は血液を循環させる“ポンプ”であるというものであろう。機能的相同性から言えば,体液を蠕動運動によって推し進める器官も原始的な“心臓”と捉えることが可能であるかもしれない。近年,マウスやヒトの心臓形成に関する分子生物学的知見は飛躍的に深まり,心臓疾患との関連も明らかになりつつある。そのようななかで,心臓形成に関する分子メカニズムは単に脊椎動物にとどまらず,節足動物や軟体動物の心臓形成においても保存されていることがわかってきた。本稿では,心筋から成る心臓がどのように進化してきたか,また脊椎動物心臓の特徴である複数の区画から成る心臓がどのようにできてきたか,についてみていきたい。
多くの動物は血液などの体液を循環させるシステムを有しており,系統的にみると,左右相称動物の主要な3つのグループである新口動物,脱皮動物,冠輪動物は何らかのポンプ器官を持つ(図1)1,2)。そのなかで,複数の区画(チャンバー)から成る心臓を有する動物は脊椎動物と軟体動物で,その他の動物は“心臓”と呼ばれるポンプ器官を持ちながら,区画はなく管が拍動しながら体液を移動させている。図1のように系統的に同じグループに属しながらもポンプ器官を有しない動物が存在することを考えると,左右相称動物の共通の祖先は原始的なポンプ器官を有していたが,その後の進化の過程で,一部動物はポンプ器官を失っていったことが推察される。
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