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I.はじめに
神経堤細胞は神経管が閉じるときにその背側におこり,背外方または腹方に移動していっていろいろな細胞に分化する。神経堤細胞は,細胞の分化,移動の研究に恰好の材料であるが,この細胞は神経管を離れるとまわりの中胚葉性の細胞と形態的に区別がつかなくなる。そこで神経堤細胞の移動分化の研究には神経管の背側を切りとる方法,あるいは3H—チミジンでラベルした神経管を移植し,オートラジオグラフィー法により神経堤細胞の移動を追跡する方法がとられてきた。一方神経管の背側を切りとると奇形がおこるため組織の分化を十分追跡することはできない。また3H—チミジンでラベルする方法では分裂のたびに3H—チミジンの拡散がおこるため神経堤の初期の移動しか追跡することはできない。
Le Douarin12)は1969年にウズラとニワトリの細胞では核内のヘテロクロマチンの存在様式に差がありFeulgen染色を施すと両者は識別可能であること(図1)を発見した。彼女はこのことを神経堤細胞の移動の研究に応用し,ウズラ胚の神経管をニワトリ胚に移植することにより神経堤細胞の移動,分化の研究を行ってきており,主に彼女のグループにより神経堤細胞の移動,分化の様式がかなり明らかにされてきた。
ウズラ胚の神経管をニワトリ胚に移植するには,どの部位を移植するかにもよるが,まずおよそ卿卵1.5〜2日のニワトリ胚の相経管を茄釜い針で作った微小なメスで切りとる。そこに同じ発生段階のウズラ胚の相当する部位の神経管を挿人する(図2)。何日後かにZenker氏液あるいはCarnoy氏液で固定しFeulgen染色を施すとニワトリとウズラの細胞が識別できるので移植された神経堤細胞がどのような部位に移動し,どのような組織に分化したかが判別できる。
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