特集 神経学における最近の研究
<解剖>
神経堤の細胞発生
藤田 哲也
1
1京都府立医科大学第二病理学教室
pp.637,638-639
発行日 1978年7月10日
Published Date 1978/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904873
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1.脊椎動物の進化と神経堤の発生
脊椎動物の前駆者と想定されている脊索動物(ホヤやナメクジウオの類)が,今から約6億年前カンブリア紀の海にはじめて出現したとき,末梢神経はすべて中枢ニューロンの軸索が伸び出したものによって構成されており,脳・脊髄神経や自律神経の神経節はもちろん,一切の固有末梢ニューロンも存在していなかったと考えられている3)。したがって神経堤も存在していなかったに相違ない。現生のナメクジウオの脊髄を見ると,感覚ニューロンがその実質内部の最背側にかたまって存在している。恐らくカンブリア紀の進化において突然変異が生じ,この部分が神経管閉鎖にさいし中枢神経系の外に放出される体制が創造されたのであろう。これに続くすべての脊椎動物では,神経板が巻き上り背部外胚葉との連絡が切れ神経管として閉鎖埋没されるさいに,その接点にある細胞群が神経堤となり一団となって腹・側方に移動していく体制が確立している。
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