特集 腹壁瘢痕ヘルニア治療up date
特集によせて
稲葉 毅
1
Tsuyoshi INABA
1
1帝京大学医学部外科
pp.937
発行日 2010年7月20日
Published Date 2010/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407103112
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腹壁瘢痕ヘルニアの歴史は,外科医による開腹手術の歴史と重なるものである.当然ながらその治療の歴史も古く,どの外科書を見ても本疾患の記載のないものはない.体格が大きく,肥満者の多い国の教科書には,目を疑いたくなるような巨大な腹壁瘢痕ヘルニアの写真が掲載されていることも多い.わが国ではそれほど巨大な腹壁瘢痕ヘルニアを目にすることは稀であると考えられてきたが,昨今のいわゆる「欧米化」の流れが続けば,日本人患者の写真が巨大ヘルニア症例として世界の教科書に載るような時代がやってきても不思議ではない.
2008年に日本ヘルニア研究会が日本ヘルニア学会として新たなスタートを切り,2009年4月には,学会としては第1回の学術集会が開催された.3会場で2日間かけてようやく発表しきれるほどの演題が集まり,新参の学会としては異例と言ってよい盛会となった.当然ながら,腹壁瘢痕ヘルニアについても複数のセッションが組まれ,活発な討議がなされた.また,昨年は日本臨床外科学会においても腹壁瘢痕ヘルニアがパネルディスカッションのテーマとして取り上げられ,治療法に関する討議がなされた.このように学会討議が活発に行われているということはすなわち,腹壁瘢痕ヘルニアは歴史的には古い疾患であるが,その発生動向や治療法が今も変化し続けているからに他ならない.
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