特集 最近のMAPキナーゼ系
特集によせて
西田 栄介
1
1京都大学ウイルス研究所
pp.90-91
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425901174
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MAPキナーゼが,インスリン刺激あるいはさまざまな細胞増殖因子や発がんプロモーターなどの刺激で活性化するキナーゼとして初めて報告されたのは,1980年代後半のことである。それからまだ10年も経過していない。しかし,その間にMAPキナーゼをめぐる研究が数多くなされ,当時からは想像もできないほどMAPキナーゼをめぐる現象が明らかになってきた。最も大きな成果の一つは,増殖シグナル伝達経路の基本メカニズムが解明されたことであろう。最近,多くの総説や教科書などでもおなじみとなってきたが,その概略を述べると,(1)増殖因子が細胞膜表面上のチロシンキナーゼ型受容体に結合する。(2)受容体二量体化あるいは多量体化が起こり,受容体の細胞内ドメインのチロシンリン酸化が起こる。(3)チロシンリン酸化された受容体に,Grb 2などのアダプター分子がSH 2領域を介して結合する。(4)アダプター分子と結合したGDP/GTP交換反応促進因子が細胞膜付近へ移行し,がん遺伝子産物Rasを活性化する(GTP型へ変換する)。(5)活性型Rasとがん遺伝子産物Rafが結合し,結果としてRafが細胞膜ヘリクルートされ活性化する。(6) RafがMAPKKを活性化し,さらにMAPKKがMAPキナーゼを活性化する。(7)活性化したMAPキナーゼが核へ移行し,転写因子を活性化する,といった図式が考えられている。もちろん,この図式自体,まだ証明されていない部分も多く残されている。
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