増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
6.組織・多細胞社会
(2)神経細胞の個性を生み出す転写調節ネットワーク
上村 匡
1
,
服部 佑佳子
1
Uemura Tadashi
1
,
Hattori Yukako
1
1京都大学大学院生命科学研究科 細胞認識学分野
pp.472-473
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200045
- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
■神経細胞の個性の一つ:多様な樹状突起の形態
多細胞生物の初期発生では様々な細胞が正確に生み出され,器官や体が作り上げられていく。器官の中でも特に神経系は,多様なニューロンのサブタイプから構成され,機能を分担する分業体制が高度に発達している。ニューロンのサブタイプを区別する尺度の一つに,シナプス入力や感覚入力の処理を支える樹状突起の形や大きさが挙げられる。樹状突起の形態はサブタイプごとに非常に多様であり,生理機能の違いに大きく寄与している1)。
誕生直後のニューロンはまだ十分に個性を獲得して(分化して)おらず,神経系全体として機能の細分化を実現するには,ニューロンが生まれた後にも遺伝子発現プログラムが適切に働くことが重要である2)。しかし,サブタイプごとに発現する異なる転写調節因子のそれぞれが,どのような遺伝子の発現を調節してサブタイプ特有の個性が獲得されるのか,そして異なる転写調節因子の間で支配する遺伝子発現プログラムはどの程度違っているのか(裏返せばどれだけ共通なのか)は,断片的にしかわかっていなかった。
Copyright © 2014, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.