増大特集 生命動態システム科学
Ⅱ.数理生物学
5.細胞
(3)細胞運動のシステム同定
本田 直樹
1
,
山尾 将隆
2
,
石井 信
2
Honda Naoki
1
,
Yamao Masataka
2
,
Ishii Shin
2
1京都大学大学院医学研究科 生命動態システム科学拠点事業 時空間情報イメージング拠点
2京都大学大学院 情報学研究科
pp.468-469
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200043
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■細胞運動のシグナル伝達
細胞運動は,創傷治癒や胚発生,がん転移などの様々な生命機能を支えるうえで重要な役割を果たしている。細胞膜下に存在するアクチンフィラメントは,細胞の形態を支えると同時に,重合・脱重合・分岐などにより形態変化を駆動する。このような細胞骨格系の再編成は,Cdc42やRac1といったRhoファミリーGタンパク質によって制御されている。一般的にはCdc42が糸状仮足形成を,Rac1が葉状仮足形成を誘導するとされる1)。また,それら分子の下流タンパク質は詳しく同定されており,細胞内シグナル伝達を生化学的な素反応の集合として記述できるようになっている。一方で,蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer;FRET)を利用したバイオセンサーにより,RhoファミリーGタンパク質の時空間的な分子活性イメージングが可能になっている2)。
このように分子パスウェイの同定や分子活性動態の可視化は進んでいるものの,「どのようにRhoファミリーGタンパク質の分子シグナルが“情報”として“処理”され,細胞形態変化まで“時空間的に伝達”されるのか」といった細胞運動の情報基盤は全くわかっていない。本稿では,細胞内情報処理の様式を同定するための解析手法を紹介する。
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